蓄電池容量が10キロワット時以下の蓄電池設備は規制の対象外で、10キロワット時を超え20キロワット時以下のものは出火防止措置が講じられていれば対象外です。20キロワット時を超えると消防長(消防署長)への届出が必要です。総務省消防庁が2023年5月31日付の通知(消防予第332号)で火災予防条例(例)等を改正し、蓄電池設備の規制基準を見直したことによるものです。
蓄電池を入れた場合の年間差額と単純回収年数は、卒FIT後の選択肢比較シミュレーターで概算できます。
卒FIT後に蓄電池を後付けする場合、FIT制度上の事前変更届出とは別に、この消防法・火災予防条例にもとづく届出の要否も確認しておくと安心です。両者は所管も手続き先も異なります。
「蓄電池設備設置届」「蓄電池設置届」と呼ばれるのは、この消防署への届出のことです。東京消防庁の案内では「電気設備設置(変更)届出書」の中で蓄電池設備として扱われ、届出の要否を分ける基準は蓄電池容量(キロワット時)です。増設・移設など設置後の変更も届出の対象に含まれます。
出典:総務省消防庁「改正火災予防条例(例)の運用等について」(消防予第332号、令和5年5月31日)、東京消防庁「火災予防条例等の一部改正について(蓄電池設備に係る基準の見直し)」
設置届が必要になる容量の区分(10kWh・20kWh)
見直し後の基準では、蓄電池容量によって設置届の要否が3つに分かれます。
| 蓄電池容量 | 規制・届出の扱い |
|---|---|
| 10キロワット時以下 | 規制対象外(無条件) |
| 10キロワット時超〜20キロワット時以下 | 出火防止措置(令和5年消防庁告示第7号の基準)が講じられていれば規制対象外 |
| 20キロワット時超 | 規制対象。消防長(消防署長)への届出が必要 |
「出火防止措置」の基準に適合する標準規格の例として、総務省消防庁の通知はリチウムイオン蓄電池向けの「IEC 62619」、ニッケル水素蓄電池向けの「IEC 63115-2」を挙げています。
なぜ基準が見直されたのか
従来の蓄電池設備の規制は、主に補水が必要な開放型の鉛蓄電池を想定した内容だったとされています。総務省消防庁は、脱炭素社会に向けて蓄電池設備の普及拡大・大容量化が見込まれることや、リチウムイオン蓄電池等の種別の多様化が進んでいることを踏まえ、規制の単位を「アンペアアワー・セル」から蓄電池容量(キロワット時)へ改める見直しを行いました。
屋外に設置する場合の離隔距離
屋外に蓄電池設備を設置する場合、建築物からの離隔距離の確保が条例上の原則です。ただし、総務省消防庁が定める延焼防止措置(令和5年消防庁告示第7号)が講じられた蓄電池設備は、この離隔距離の確保が不要となる特例が設けられています(東京消防庁の公式資料で確認)。具体的な離隔距離の数値や特例の適用条件(標準規格への適合方法等)は設置環境によって異なるため、設置前に施工業者と一緒に、設置予定地の消防本部・消防署へ直接確認することが確実です。
延焼防止措置の標準規格の例と、適合確認の扱い
消防庁の通知(消防予第332号)の別紙1には、令和5年消防庁告示第7号が定める延焼防止措置と「同等以上」の措置が定められた標準規格の例として、次の4規格が挙げられています。
| 標準規格 | 通知での位置づけ |
|---|---|
| JIS C 4412-1 | 7号告示第3の延焼防止措置と同等以上の措置が定められた標準規格の例 |
| JIS C 4412-2 | |
| IEC 62040-1 | |
| IEC 62933-5-2 |
また、同じ通知は、蓄電池設備の標準規格への適合性について、第三者試験機関等により確認されたもののほか、メーカーや輸入代理店等が自ら所定の方法により確認したものでも差し支えないとしています。ご自宅の蓄電池がどの規格に適合しているかは製品ごとに異なるため、設置前に施工業者へ仕様書や適合の確認方法を尋ね、必要に応じて消防本部・消防署にも確認してください。
一般家庭用の蓄電池は対象外になることが多いが、確認は必要
一般家庭で導入される蓄電池は、単体であればこの規制対象外の範囲に収まることが多いとされています。ただし、複数の蓄電池を接続して設置する場合や、V2H充放電設備など大容量の設備を組み合わせる場合は、合計容量が20キロワット時を超えないか確認しておくと安心です。
ここでいう「容量」は出力(kW)ではなく蓄電容量(kWh)を指す数値で、混同しやすい両者の違いは定格出力と蓄電容量の違い、仕様表に載る容量の数値の読み方は定格容量と初期実効容量の違いで確認できます。参考使用期間・充放電効率など蓄電池の一般的な性能の考え方は蓄電池の寿命で整理しています。
届出が必要になる場合の届出先・様式は、設置予定地を管轄する消防本部・消防署によって異なります。設置を検討する際は、着工前に施工業者と一緒に確認しておくことが望ましいとされています。
業者の説明のみに頼らず、消防本部・消防署へ自分でも確認しておくと安心です。訪問販売で契約を急がされた場合の注意点は訪問販売トラブルとクーリング・オフで確認できます。
届出が必要なときの届出者・期限・自治体の例
20キロワット時を超える蓄電池設備で届出が必要になる場合、東京消防庁の案内では、届出は設置する7日前までに、管轄の消防署へ行うこととされています。届出後は原則として消防署の検査を受けます。届出者は設備の関係者(所有者・管理者・占有者)で、電気工事の施工者ではないと明記されています。
| 自治体 | 10kWh以下 | 10kWh超〜20kWh以下 | 20kWh超 |
|---|---|---|---|
| 東京消防庁 | 20kWh以下は届出の対象外 | 設置7日前までに管轄消防署へ届出 | |
| 仙台市 | 適合も届出も不要 | 届出は不要(消防法令または標準規格への適合は必要) | 適合も届出も必要 |
出典:東京消防庁「電気設備設置(変更)届出書」、仙台市消防局「蓄電池設備に係る基準の改正について」
届出が必要になった場合の期限・部数・添付書類は自治体ごとに違います。東京・堺・名古屋・広島・浜松の比較は蓄電池設備の設置届出書の出し方を自治体別に比較にまとめています。
施行時期
この基準見直しにもとづく火災予防条例の改正は、令和6年(2024年)1月1日から施行されています(地方自治体ごとの条例改正の例で確認)。火災予防条例は市町村ごとに定められるため、詳細な運用は設置予定地の消防本部・消防署に確認してください。
国の側では、総務省消防庁の通知(消防予第306号、令和5年5月31日)が、条例の基準を定める省令の改正と「蓄電池設備の出火防止措置及び延焼防止措置に関する基準」(令和5年消防庁告示第7号)の施行日を令和6年1月1日としています。
市町村の条例の例として、東京消防庁の改正概要では、火災予防条例第57条で蓄電池設備の届出の対象を20キロワット時を超えるものとしています。あわせて、届出に添える蓄電池設備の概要表(別記様式第94号)の出力の記入欄の単位を「アンペアアワー・セル」から「キロワット時」へ変更しています。東京都以外の地域では、条例の条番号や様式が異なることがあります。
出典:総務省消防庁「消防法施行規則及び対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令等の公布等について」(消防予第306号、令和5年5月31日)、東京消防庁「火災予防条例等の一部改正について(蓄電池設備に係る基準の見直し)」
この消防法上の届出とは別に、系統充電機能つきの蓄電池を導入する場合は電力会社側の手続きが必要になることもあります。停電時にどこまで蓄電池の電気を使えるかは自立運転機能で確認できます。蓄電池を併設した場合の年間収支・投資回収年数を試算したい場合は、当サイトの卒FIT後の比較シミュレーターを参考にしてください。
届出の要否とは別に、蓄電池ユニット本体の設置場所が寿命・保証に与える影響は蓄電池本体の設置環境が寿命・保証に与える影響で整理しています。既設の太陽光に蓄電池を後付けできるかどうかは条件で分かれます。条件は太陽光への蓄電池の後付けが可能になる条件で確認できます。
よくある質問
Q家庭用蓄電池を設置すると、必ず消防署への届出が必要ですか?
Aいいえ。総務省消防庁の通知(令和5年5月31日付消防予第332号)にもとづく火災予防条例の改正により、蓄電池容量が10キロワット時以下は規制対象外、10キロワット時を超え20キロワット時以下は出火防止措置が講じられていれば規制対象外とされ、届出が必要になるのは20キロワット時を超えるものです。一般家庭用の蓄電池の多くはこの範囲に収まります。
Q10キロワット時を超え20キロワット時以下の蓄電池は、無条件で届出不要ですか?
A規制対象外となるには条件があります。10キロワット時以下のものは無条件で規制対象外ですが、10キロワット時を超え20キロワット時以下のものは、総務省消防庁が定める出火防止措置(令和5年消防庁告示第7号。IEC 62619やIEC 63115-2等の標準規格への適合)が講じられていることが条件です。
Q20キロワット時を超える場合はどうすればいいですか?
A消防長(消防署長)へのあらかじめの届出が必要です。届出先・様式は設置予定地を管轄する消防本部・消防署によって異なるため、設置前に直接確認することが案内されています。
Q「蓄電池設備設置届」と「蓄電池設置届」は同じものですか?基準はどこで決まりますか?
Aどちらも、蓄電池設備を設置する前に消防署へ出す届出を指す言い方として使われます。東京消防庁では「電気設備設置(変更)届出書」の対象に蓄電池設備(蓄電池容量が20キロワット時以下のものは除く)が含まれ、設置の7日前までに管轄消防署へ届け出るとされています。届出が要るかどうかの基準は、蓄電池容量(キロワット時)で決まります。
設置済みの蓄電池を別の機種へ入れ替える場合に、公式資料で確認できる範囲は蓄電池を交換・入れ替えたときの届出で整理しています。
蓄電池の記事は蓄電池の記事一覧(選び方・設置の手続き・運転・安全・補助金別)から目的別に探せます。
関連記事として、東京都の家庭用蓄電池助成(令和8年度)も確認できます。
消防署や施工業者に連絡する前に手元に揃える物・聞くこと
- 01
蓄電池の容量(kWh)
仕様書で蓄電容量を確認します。複数台を接続する場合は合計で20キロワット時を超えないかも見ます。
- 02
適合している標準規格
10キロワット時超の場合は、IEC 62619などへの適合を、施工業者に仕様書や確認方法で尋ねます。
- 03
設置場所(屋内・屋外)と建物からの距離
屋外の場合は、離隔距離の確保や延焼防止措置の特例が使えるかを確認します。
- 04
管轄の消防本部・消防署
届出先・様式・期限は自治体で異なるため、設置予定地の窓口に直接確認します。
- 05
届出者は誰か
届出が必要な場合、東京消防庁の案内では所有者・管理者・占有者が届出者で、工事施工者ではないとされています。
本記事は一般的な情報提供です。届出の要否・様式・運用は設置予定地の消防本部・消防署の判断が優先するため、詳細は設置前に直接ご確認ください。特定の施工業者・製品を推奨するものではなく、電気工事・消防設備の設計や施工には関与しません。