V2H充放電設備は、停電時に電気自動車(EV・PHEV)の車載バッテリーから住宅へ給電できますが、実際に使える出力(ワット数)は機種によって大きく異なります。「V2Hがあれば停電時も安心」と一括りにせず、機種ごとの仕様を確認しておく必要があります。
出力容量はメーカー・機種で異なる
ニチコンのEVパワー・ステーション(VCGシリーズ)は、自立運転(停電)時の出力を単相2線式で3kVA未満、単相3線式で6kVA未満と公式サイトで公表しています。
出典:ニチコン「EVパワー・ステーション(系統連系型V2Hシステム)製品仕様」
| モデル | 停電時(自立運転時)の対応 |
|---|---|
| スタンダードモデル | 単相2線式・3kVA未満。200V機器は使用できない |
| プレミアムモデル | 単相3線式・6kVA未満。「全負荷」&200V対応で住宅全体をバックアップ |
出典:ニチコン「EVパワー・ステーション(VCGシリーズ)」商品ページ
デンソー製のV2H-充放電器は、最大5900Wまでの使用が可能と案内されていますが、公式資料には「停電時にご使用を控えていただきたい機器や、使用できない機器がございます。契約電力1500W以下の範囲でご使用ください。1500Wを超える場合は給電回路を限定して設置します」と明記されています。
機器のカタログ上の最大出力と、実際に安全に使える範囲は別に考える必要があります。
出典:デンソー「V2H-充放電器」製品資料(トヨタ自動車公式サイト掲載)
使える範囲は住宅の配線設計で決まる
停電時にV2Hからどの範囲へ給電するかは、設置時の配線設計によって決まります。ニチコンのプレミアムモデルのように「全負荷」対応の機種であれば分電盤を経由して住宅全体に給電できますが、スタンダードモデルや、デンソー機で契約電力1500Wを超える場合は、給電したい回路をあらかじめ限定して設計する必要があります。
太陽光発電の自立運転機能(蓄電池なしの場合)も、専用コンセントからの給電に限られ、出力の上限は1500W程度が目安です(停電時、太陽光発電は使える?自立運転機能を確認する)。V2Hを検討する場合も、太陽光の自立運転と同じように「使える回路・機器」をあらかじめ確認しておくことが大切です。
給電できる期間の目安
資源エネルギー庁の資料は、「一般的なEVで、一般家庭(平均的な消費電力12kWh)の約3日分の非常用電力を確保」できると試算しています。この試算は2022年11月時点の資料にもとづくもので、実際の給電可能時間は車両のバッテリー容量・充電残量・同時に使う家電の消費電力によって変わります。
出典:資源エネルギー庁「EV等の電力システムにおける活用に関して」(2022年11月28日、次世代の分散型電力システムに関する検討会資料)
| 区分 | 参考車種・設備 | 電池容量 |
|---|---|---|
| EV | 日産リーフ | 60kWh |
| 軽EV | 日産サクラ | 20kWh |
| 軽貨物EV | 三菱ミニキャブ・EV バン | 16kWh |
| PHEV | 三菱アウトランダーPHEV | 20kWh(EV換算) |
| 一般的な家庭用蓄電池 | ― | 5〜10kWh |
電気自動車の電池容量は、一般的な家庭用蓄電池(5〜10kWh程度)より大きい機種が多く、これが非常用電源として期待される理由の一つです。ただし電気自動車は本来「動くこと」が目的の機器であるため、非常時にすぐ使える充電残量が確保されているとは限りません。日頃から一定の充電残量を保っておくなどの備えが必要です。
太陽光発電と組み合わせる
V2Hと太陽光発電を組み合わせれば、日中に太陽光で発電した電気を車両に充電しながら使えるため、より長期の停電にも対応しやすくなります。デンソーの公式資料も「さらに太陽光発電があれば、発電した電気をクルマに充電することで長期の停電時にも対応できます」と案内していますが、太陽光発電が停電時に利用できるかどうかはパワーコンディショナの機種によって異なるとも注記されています。
太陽光の余剰電力を優先してV2Hの車両充電に回す運転モードの考え方はV2Hで太陽光の余剰電力を優先充電する運転モードで整理しています。
実際の活用事例
災害時にV2Hが実際に使われた例として、資源エネルギー庁の資料は2019年の令和元年房総半島台風(台風第15号)による大規模停電の際、自動車メーカー等が電動車を被災地に派遣し、外部給電機能を活用した事例を紹介しています。避難所での照明や携帯電話の充電等に活用されたと報告されています。
出典:資源エネルギー庁「EV等の電力システムにおける活用に関して」(2022年11月28日)
導入前に確認すること
- 01
車両の対応を確認する
お使い(購入予定)の車両がV2H対応かどうか、車両メーカー・V2H機器メーカーの適合表で確認します。
- 02
停電時出力を確認する
検討する機種の停電時出力(kVA・W)と、住宅全体に給電できるか一部制限があるかを確認します。
- 03
配線設計を相談する
契約電力や、給電したい回路の範囲を施工業者と相談して設計します。
- 04
太陽光との連携を確認する
太陽光発電と組み合わせる場合は、パワーコンディショナとの連携可否をあわせて確認します。
- 05
充電残量の備えをする
日頃から車両の充電残量に一定の余裕を持たせておくと、非常時にすぐ給電を始めやすくなります。
本サイトは特定の施工業者・機種を推奨せず、卒FIT後の3つの選択肢を同じ条件で比較する試算のみを提供しています。V2H・電気自動車の導入費用や補助金の考え方はV2H充放電設備とは?蓄電池との違いと国の補助金、通常の充電設備との違いはEV充電設備とV2Hの違いで整理しています。卒FIT後の売電収入・電気代削減額の試算は、当サイトの卒FIT後の比較シミュレーターで確認できます(この試算にはV2Hの導入費用・運用効果は含まれていません)。
よくある質問
QV2Hがあれば停電中もずっと家中の電気を使えますか?
Aいいえ。使える範囲・時間は機種の出力容量や配線設計、車両の充電残量によって変わります。資源エネルギー庁の試算では一般的なEV1台で一般家庭の約3日分の電力を確保できるとされていますが、確実に保証されるものではありません。
Q停電時、家中の電気をV2Hから使えますか?
A機種によります。ニチコンのプレミアムモデルのように「全負荷」対応で住宅全体をバックアップできる機種がある一方、スタンダードモデルは200V機器が使えないなどの制限があります。給電したい範囲は設置時に施工業者と相談して設計する必要があります。
Qどの電気自動車でもV2Hを使えますか?
Aいいえ。V2H対応車両に限られます。導入前に、お使いの車両(または購入予定の車両)がV2H対応かどうかを、車両メーカー・V2H機器メーカーの適合表で確認してください。
Q太陽光発電の自立運転機能とV2Hはどう違いますか?
A太陽光の自立運転は日中の発電時のみ使え、出力の上限も1500W程度が目安です。V2Hは車載バッテリーの容量(一般的なEVで20〜60kWh程度)を使えるため、より長時間・大きな出力での給電が期待できますが、車両がV2H対応であることが前提です。
本記事は一般的な情報提供です。停電時に使える出力・範囲・時間は機種・設置条件・車両の状態により異なるため、各メーカーの公式情報・取扱説明書、契約中の施工業者に個別にご確認ください。特定の施工業者・製品を推奨するものではなく、電気工事の設計・実施、個別の投資・税務助言は行いません。