太陽光や自宅の電気設備と同じ構内でつながる家庭用蓄電池は、手引きの定義では電気事業法の「蓄電所」に含まれません。経済産業省の手引きは、発電設備・変電設備・需要設備に併設された電力貯蔵装置(蓄電池)は、規模に関わらず蓄電所に含まれないとしています。
蓄電池を入れた場合の年間差額と単純回収年数は、卒FIT後の選択肢比較シミュレーターで概算できます。
蓄電所は、系統から受けた電気を貯めて、同じ電圧・周波数で構外へ伝送する専用の設備を指します。見積書や施工業者の説明で「蓄電所」「電力貯蔵装置」という言葉を見かけたときに、自宅の設備とは別の区分の話か、自宅に関わる話かを見分けるための記事です。
出典:経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」
電気事業法での蓄電池の呼び方(電力貯蔵装置と蓄電所)
電気事業法の関係では、蓄電池は「電力貯蔵装置」と呼ばれます。電気設備に関する技術基準を定める省令の第1条が、電力貯蔵装置を「電力を貯蔵する電気機械器具」と定義しています。
手引きの解説では、停電時や負荷変動時に貯めた電力を放出する機器で、二次電池(蓄電池)のほか、超電導電力貯蔵装置、フライホイール、電気二重層キャパシタなども該当するとされています。
「蓄電所」は、それとは別の言葉です。専ら電力の貯蔵を目的とする蓄電用の電気工作物で、技術基準の省令では次のように定義されています。
- 構外から伝送される電力を、構内の電力貯蔵装置などに貯蔵する。
- 貯蔵した電力を、同じ使用電圧・周波数のまま、さらに構外へ伝送する。
- 同一構内で発電設備・変電設備・需要設備と電気的につながっているものは除く。
自宅の蓄電池が蓄電所に含まれない理由
手引きの解説は、最後の除外の条件について、発電設備や変電設備、需要設備に併設されている電力貯蔵装置は規模に関わらず蓄電所には含まれない、と書いています。蓄電所にあたるのは、系統に単独でつながっている電力貯蔵装置の群(駆動する逆変換装置や保護機器を含む)です。
自宅の蓄電池は、屋内配線などの需要設備や、太陽光の発電設備と同じ構内でつながっています。そのため、この定義の上では、蓄電所ではなく「需要設備などの一部になっている電力貯蔵装置」の側にあたります。
一般家庭の屋内配線設備は、経済産業省の用語の説明では「一般用電気工作物」(600V以下で受電する、安全性の高い電気工作物)の例として挙げられています。
出典:経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」、経済産業省「用語の定義」(一般用電気工作物)
併設の蓄電池に及ぶ規制と、蓄電所の手続きの規模の目安
手引きによると、発電所・変電所・需要設備などの一部として蓄電池を設置する場合は、それぞれの設備への規制の中で、付随的に規制が及びます。例として、発電所の工事計画の中で蓄電池をあわせて確認する、という扱いが挙げられています。
規模の目安として、手引きは次の数字を示しています。
| 項目 | 手引きの記載 |
|---|---|
| 工事計画の届出が必要になる併設の蓄電池 | 附属先の設備に、8万kWhの電力貯蔵装置を設置するか、20%以上の容量変更を行った場合 |
| 蓄電所で工事計画の届出などが加わる規模 | 出力1万kW以上、または容量8万kWh以上 |
| 蓄電所に共通して求める法に基づく措置 | 技術基準への適合維持義務、電気主任技術者の選任、保安規程の作成・届出(手引きの注記) |
8万kWhは、消防署への届出で基準になる20kWhの4,000倍です。家庭用蓄電池の容量は仕様書の数字で確認でき(見方は蓄電池の容量の選び方)、消防署への届出の10kWh・20kWhと並べると、この工事計画の数字とは桁が離れています。
ただし、これは手引きに書かれた制度の枠組みの説明です。自宅の設備にどの手続きが必要かは、設置する場所と構成で変わるため、施工業者や監督部の電力安全課で確かめてください。
出典:経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」
電気事業法の事故報告の20kWh超と、消防署への届出の20kWhは別の話
手引きには、令和7年11月20日施行の電気関係報告規則の改正により、容量20kWh超の電力貯蔵装置を事故報告の対象としている、という記載があります。専ら非常用の電力貯蔵装置(バックアップ電源など)は報告の対象外です。
負荷平準化や、受電・発電電力の平準化などを目的に、電力を一時的に貯めて負荷へ供給するものは対象になる、とも書かれています。
消防署への届出にも「20kWh」が出てくるため、混同しやすい点です。次の表で、数字ごとに根拠の制度を分けて見てください。電力会社への申込みは蓄電池の系統連系の届出で確認できます。
| 手続き | 根拠 | 数字の目安 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 消防署への届出 | 火災予防条例(総務省消防庁の通知にもとづく改正) | 10kWh以下は対象外、10kWh超〜20kWh以下は出火防止措置があれば対象外、20kWh超は届出 | 蓄電池の設置届 |
| 電気事業法の事故報告 | 電気関係報告規則(令和7年11月20日施行の改正) | 容量20kWh超の電力貯蔵装置が報告対象(専ら非常用を除く) | この記事 |
手引きの記載だけでは、自宅の設備が事故報告の対象になる場合の具体的な当てはめまでは読み取れません。気になる場合は、手引きの問い合わせ先(本省または設置地域の産業保安監督部の電力安全課)に確認できます。
出典:経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」、東京消防庁「火災予防条例等の一部改正について(蓄電池設備に係る基準の見直し)」、総務省消防庁「改正火災予防条例(例)の運用等について」(消防予第332号、令和5年5月31日)
kWとkWhを取り違えない(手引きの出力と容量の考え方)
手引きは「その他関連情報」で、kWは瞬間に使われる電力、kWhはkWに時間をかけた電力量を表す単位だと説明しています。蓄電所では、出力(kW)と容量(kWh)の両方が規模の判断に使われます。
家庭用蓄電池でも、カタログの「定格出力」と「蓄電容量」は別の数字です。違いはkWとkWhの違いと定格出力と蓄電容量の違いで整理しています。
施工業者・販売店に確かめるときの質問
- 01
自宅の蓄電池が、太陽光や屋内配線と同じ構内でつながる構成か
つながる構成であれば、手引きの定義上は蓄電所ではなく併設の電力貯蔵装置にあたります。
- 02
蓄電池の容量(kWh)と出力(kW)はいくつか
仕様書の数字を控えて、消防署への届出の10kWh・20kWhと、事故報告の20kWh超をそれぞれ照らします。
- 03
電力会社への申込みや、各種届出は誰が出すか
届出者は制度ごとに違うため、見積書にその範囲が書かれているかを確認します。
- 04
不明な点を、監督部の電力安全課に確認してよいか
制度の当てはめは、手引きの問い合わせ先で確かめられます。
蓄電池を入れたあとの年間収支は、当サイトの卒FIT後の比較シミュレーターで概算できます。蓄電池の記事は蓄電池の記事一覧から目的別に探せます。
よくある質問
Q自宅の太陽光に併設した蓄電池は、電気事業法の「蓄電所」ですか?
A手引きの定義では含まれません。経済産業省の手引きは、蓄電所を「構外から伝送される電力を構内の電力貯蔵装置に貯蔵し、同じ使用電圧・周波数で構外へ伝送する所」と定め、同じ構内で発電設備・変電設備・需要設備と電気的につながっているものは除くとしています。発電設備や需要設備に併設された電力貯蔵装置は、規模に関わらず蓄電所に含まれないと解説されています。
Q蓄電池は電気事業法でどう呼ばれますか?
A「電力貯蔵装置」です。電気設備に関する技術基準を定める省令の第1条で「電力を貯蔵する電気機械器具」と定義され、解説では二次電池(蓄電池)、超電導電力貯蔵装置、フライホイール、電気二重層キャパシタなどが例に挙がっています。
Q消防署への設置届の「20kWh」と、事故報告の「20kWh」は同じ話ですか?
A別の制度です。消防署への届出は火災予防条例にもとづく蓄電池設備の規制で、20kWh超が届出の対象です。経済産業省の手引きにある「容量20kWh超」は、電気関係報告規則の改正(令和7年11月20日施行)で電力貯蔵装置の事故報告の対象となる容量の目安で、手続きの相手も根拠の法令も異なります。
Q自宅の蓄電池に電気事業法上の手続きが必要かは、どこで確かめますか?
A経済産業省の手引きの問い合わせ先は、本省または設置地域の産業保安監督部の電力安全課です。自宅の構成に当てはめた確認は、設置前に施工業者にも尋ねておくと安心です。
本記事は経済産業省の手引き(確認日時点)にもとづく一般的な情報提供です。自宅の設備に必要な手続きは、設置する構成や地域で変わるため、設置前に施工業者や監督部の電力安全課へご確認ください。特定の施工業者・製品を推奨するものではなく、電気工事や設備の設計・施工には関与しません。