浸水した太陽光発電設備には近づかず、手を触れず、販売施工事業者に連絡するのが基本です。経済産業省とJPEA(太陽光発電協会)の注意喚起は、浸水中だけでなく、水が引いたあとの感電や、浸水したパワコンの短絡による発熱にも触れています。
この記事は、浸水が「起きたあと」の扱いに絞っています。設置前に浸水想定を調べる手順はハザードマップで浸水想定を確認するガイド、台風・大雪・落雷を含む災害対策は太陽光の災害対策で扱っています。
機器別:資料が示す危険と連絡先
| 機器 | 資料が示すこと | 連絡先 |
|---|---|---|
| 太陽光パネル | 光が当たれば発電することがあり、素手で触ると感電するおそれがある。水害を受けたパネルは絶縁不良の可能性がある(経産省・JPEA) | 販売施工事業者(50kW未満) |
| パワコン・接続箱(集電箱) | 浸水中に近づくと感電するおそれがある。水が引いても内部に水分が残ることがある。浸水したパワコンは直流回路が短絡状態になる可能性がある(経産省・JPEA) | 販売施工事業者(50kW未満) |
| 蓄電池 | NITEが試験した住宅用蓄電池は、水没しても二次災害なく安全に停止した。内部に水が入った痕跡があり、部品交換なしの再利用は困難だった(NITE) | 販売施工事業者(太陽光設備の案内に準じる) |
蓄電池の行は1製品の試験結果です。すべての蓄電池に同じ結果が出るという意味ではありません。詳しくは後半の節で説明します。
浸水中から水が引くまで:近づかない
経済産業省は、令和元年10月31日の注意喚起で、浸水した太陽電池発電設備は接近すると感電するおそれがあるため、一般の住民も含めてむやみに近づかないよう求めています。パネルは光が当たれば発電することがあるため、周囲にロープを張るなど、関係者以外が不用意に立ち入らない対策も挙げています。
JPEAも、パワコンやパネルと電線の接続部は、水没・浸水している間に接近または接触すると感電するおそれがあるとしています。漂流物でパネルや集電箱が壊れたり、電線が切れたりしている場合も、近づかないよう呼びかけています。
出典:経済産業省「浸水した太陽電池発電設備による感電事故防止について(注意喚起)」、JPEA「太陽光発電設備が水害によって被害を受けた場合の対処について」(2026-10-20確認)
水が引いたあとの内部の水分と、浸水したパワコンの短絡
経済産業省は、水が引いた後であっても集電箱内部やパワーコンディショナ内部に水分が残っていることがあり、触ると感電するおそれがあるとしています。やむを得ず取り扱う場合は、ゴム手袋・ゴム長靴の着用などの感電対策を求めています。
JPEAは、浸水したパワコンでは直流回路が短絡状態になる可能性があるとしています。パネルが活線状態(電気が流れる状態)だと、短絡電流が流れてショートや発熱が起きる可能性があるためです。
浸水したパネルについてもJPEAは、絶縁不良となっている可能性があり、接触すると感電するおそれがあるとしています。複数枚が接続されたまま流された場合は、日射を受けて高い電圧・電流が発生するため、立ち入りを防ぐ対策が必要としています。
出典:経済産業省「浸水した太陽電池発電設備による感電事故防止について(注意喚起)」、JPEA「太陽光発電設備が水害によって被害を受けた場合の対処について」(2026-10-20確認)
蓄電池の水没試験でわかったこと
蓄電池の浸水については、NITE(製品評価技術基盤機構)が住宅用蓄電池システムで水没試験を行っています。令和3年10月、エリーパワー株式会社と共同で、満充電・充放電可能な状態の蓄電池ユニットを、系統電源と分電盤を接続したまま、床上浸水を想定して底部から50cmまで水没させました。
| 項目 | NITEの技術報告書の記述 |
|---|---|
| 試験条件 | 真水で48時間浸漬し、排水後さらに48時間観察 |
| 注水中・浸漬中・排水後 | 異常発熱、火花、発煙、発火は確認されなかった |
| 内部への水の入り方 | 浸漬中に内部へ水が入り、約17L分の水位低下があった |
| 安全停止 | 水没を検知して制御装置が異常停止信号を出し、蓄電池側のブレーカーが遮断された |
| 電池セル | すべてのセルで開裂・電解液の漏液はなかった |
| 試験後の状態 | 内部に水侵入の痕跡があり、部品交換なしの再利用は困難 |
NITEは、この試験体が「蓄電池システム由来の二次災害が起きず、安全に停止する」製品であることを確認できたとしています。安全に停止しても、水が入った蓄電池をそのまま使い続けられるわけではありません。
出典:NITE「国内初:大型蓄電池が水没した際の製品状態を検証するための試験を開始」(令和4年1月31日)、同・水没試験報告書(2026-10-20確認)
この試験結果の使い方:1製品・真水・蓄電池ユニットのみ
報告書の条件を読むと、この結果を自宅にそのまま当てはめられない点が3つあります。
- 1製品の結果:試験したのはエリーパワー社の住宅用蓄電池1機種です。他社・他機種の結果ではありません。
- 真水での試験:浸漬液は水道水です。河川の氾濫による泥水や、海水の浸水は条件に含まれていません。
- 蓄電池ユニットのみ:パワコンは床上浸水レベルでは水没しない高さに設置されるとして、試験対象から除かれています。
このため、自宅の蓄電池が浸水した場合の安全性や再使用の可否は、メーカーや販売施工事業者の点検で確かめることになります。蓄電池の設置場所の選び方はハザードマップのガイドで確認できます。
連絡の順番:販売施工事業者、メーカー、保険
経済産業省とJPEAは、出力50kW未満の設備は販売施工事業者に連絡するよう案内しています。経済産業省は、太陽光発電設備に充分な知見のある者が作業を行うよう求めています。住宅用は通常この区分にあたるため、販売店・施工店が連絡先になります。
当サイトの補足として、販売店が不明な場合に備え、メーカーの相談窓口を控えておくと連絡しやすくなります。保険の対象になるかは火災保険・地震保険の確認、パネルが壊れた場合はパネルの破損と対応、設備を処分するときの補助金の扱いは災害による処分と補助金で整理しています。
浸水後に設備を入れ替えるか迷うときは、卒FIT後の比較シミュレーターで、蓄電池を足した場合の年間収支を試算できます。
よくある質問
Q水が引いたら、太陽光パネルやパワコンはもう触ってよいですか?
A経済産業省は、水が引いた後でも集電箱内部やパワーコンディショナ内部に水分が残っていることがあり、触ると感電するおそれがあるとしています。復旧作業でやむを得ず取り扱う場合は、ゴム手袋・ゴム長靴などの感電対策を求めています。
Q浸水した設備の連絡先はどこですか?
A経済産業省とJPEAは、出力50kW未満の設備は販売施工事業者に連絡するよう案内しています。当サイトの補足として、販売店が不明な場合に備え、メーカーの相談窓口を控えておくと連絡しやすくなります。
Q浸水した蓄電池は、乾かせばまた使えますか?
ANITEの住宅用蓄電池の水没試験では、試験した1製品について、内部に水が入った痕跡があり部品交換なしの再利用は困難だったと報告されています。再使用できるかの判断は、メーカーや販売施工事業者の点検に委ねます。
Q浸水した蓄電池は、発火しますか?
ANITEが試験した住宅用蓄電池(満充電・床上浸水レベルの水没)では、注水中・浸漬中・排水後のいずれも異常発熱、火花、発煙、発火は確認されませんでした。ただし1製品・真水での結果で、他の製品や海水・泥水の浸水に当てはまるとは限りません。
Q浸水した設備を見かけたら、どうすればよいですか?
A経済産業省は、浸水した太陽電池発電設備にむやみに近づかず、見かけたときは最寄りの産業保安監督部、経済産業省または設置者に知らせるよう呼びかけています。
本記事は公開資料の整理で、点検・復旧・電気工事の手順を示すものではありません。浸水した設備には近づかず、点検や撤去は電気の知見のある専門業者に見積もりを取って依頼してください。
概算は本人利用の目安です。見積もりと契約書の確認を優先してください。